プラトーノフ『プラトーノフ作品集』


冬休みから読み始めてようやく読み終わった。



中央アジアの砂漠が舞台の2作品ほか。


馴染みのない舞台だけあって、なかなか共感できずにいたが、私的な叙述にどんどん引き込まれる。



奴隷貧民の暗くて悲しい物語『粘土砂漠』


ただただ暗く、ただただ悲しい。
それでも、読み終わった後に残る幸福感?


今までにない読後感で、後述する有名な作品『ジャン』よりもこちらを多くの人に読んでもらいたいと思った。




「魂、生命以外何も持っていない」少数民族の物語『ジャン』


生きることに執着しないジャンたちの生活が逆に、「生」や「幸福」を際立たせるという矛盾が印象的。







訳者解説に「プラトーノフの作品には、子どもがきわめて大きな役割を果たすことが多い。」とあるが、その通りなのである。


未来ある少年少女が、身勝手な大人にも貧困などの試練にも屈せずに立ち向かい生きる姿は、「幸福とはなにか」ということを我々に考えさせてくれる。





他に、



老婆の通夜に集まる6人の子供の短編『三男』


出張から戻る夫を待つフローシャと引退した鉄道機関士の父の物語『フロー』


除隊した軍曹イワノフが家族の待つ故郷に戻り、妻や子供の変化に戸惑う『帰還』


の全5編収録。